山梨新報様⇒
http://www.y-shinpou.co.jp/ 2019年2月15日(金)掲載
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簿記を勉強すると、帳簿や決算書が深く理解できるようになります。
帳簿、決算書というと「税務申告や融資に関係して仕方なく作る書類」といったイメージがあるかも知れません。しかしそれらは作ることよりも、利用することに価値があります。
京セラを創業された稲盛和夫さんは、会社経営を飛行機の操縦に例えました。
パイロットが計器盤を見ながら飛行機を操縦するように、経営者は会計を見ることで会社の実態を読み取りながら経営をしていくものであると、「稲盛会計学」で伝えています。
「とにかく頑張る」「一生懸命やればなんとかなる」といった言葉は、経営管理には当てはまりません。経営管理者は、正確な会計情報に基づいて、適切な経営判断を下す事が求められます。
飛行機のパイロットは、飛行機の機能を深く理解し、それがどのように計器盤に反映されるか知っています。
計器盤から飛行機の状態を正確に把握し、フライトに生かします。
これと同様、組織の行動がどのように帳簿に記入され、決算書に反映されているかを知ると、帳簿や決算書から組織の状態を深く理解できるようになります。
そしてその理解が正しい意思決定へとつながっていきます。このスキルを身に付けるのが簿記の勉強です。
経営の意思決定は、人工知能(AI)による業務化が進んでも、当面人間が担う能力だと思われます。
日本商工会議所が主催する簿記検定は、入門から高度な会計レベルまで各級に分かれており段階的に学習できます。若い人はもちろん、65歳以上の高齢者の方まで幅広い年齢層の方が頑張っています。また、県内でも2月、6月、11月と年に3回開催され、受験しやすくなっています。
期限を定めずに漠然と勉強するより、検定試験合格を目指して勉強された方が学習効果も上がります。「〇月検定で〇級合格を!」と目標を掲げて簿記の学習をされてみてはいかがでしょうか。
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さらに補足します。
20年前に会計ソフトが流通した当時、「会計ソフトで簡単に帳簿を作れるからもう簿記の勉強はいらない。」などとおっしゃる方が多くいらっしゃいました。
会計帳簿・決算書を「税務署や銀行に提出するため、仕方なく作るもの」だととらえていると正しい意見になります。
しかし、会計帳簿・決算書はつくるためのものではなく、利用するものです。
企業の活動がどうやって帳簿に記入され、決算書に反映されているのかを把握する事はとても大事です。そのシステムの学習が簿記の学習です。
簿記を学習しないで決算書から企業の状況を把握し意思決定するのは、あるスポーツをやったことがない方がそのスポーツの監督をするようなものです。
山梨簿記学院には学生や転職希望の方のみならず、経営者の方や経営管理者の方も多くいらっしゃいます。数字から組織を管理される重要性を理解されており、数字の作成プロセスを学習されてます。簿記の学習は記帳・決算書の作成自体のためににも役立ちますが、どちらかというと現代の簿記の勉強は組織管理のためにあるといって良いと思います。
なお、AIに仕事を奪われて、簿記の勉強がいらなくなるというのも誤解です。スタンフォード大学などが将来なくなる仕事に、「簿記・会計・監査の事務員」などをあげていますが、それは単純な記帳代行のようなものに限ります。数字から組織を判断する能力は、生産のほとんどすべてをAIが担うまでは必要な知識です。むしろこれからの時代に求められる経営者・経営管理者必須のスキルです。ちなみにAIが生産のほとんどすべてを担っても、その会計システムは現代の複式簿記と根本的には大差ないでしょう。
「AI化でなくなる仕事はなんだろう。」
「結局自分に仕事はあるのか?」
「自分はこれから何を勉強すればいいのか」
という不安を抱えている人は多いと思います。
私のおすすめは、
「なんでもいいから勉強する。」です。
未来など詳細にはわかりません。だれにもわかりません。勉強をしつづけるとなんでも簡単にマスターできるようになります。
「その時代に合わせて色々なものを、その場で身に着ける能力」があれば最強です。