雪が降ると、毎回自宅近所で雪掻きが始まる。
日当たりの良いところはほっといても解けるので、やらなくてもいいと思う。しかし、出動しないと体裁が悪い。参加せざるを得ない。
この集団心理はどうにかならないのだろうかと思う。
近所の方々とのコミュニケーションを深める機会と割り切れば悪くはないのだが。
さて、今回は大雪である。
実家は家族にまかせるとして、学校駐車場の雪掻きは現実に必要である。
全20台分。
まだある。山梨簿記学院は企業である。隣接道路も雪掻きするのは当然である。
自分のところの駐車場だけ雪掻きをするというのは企業として「恥」である。
実際、近所のペンギンカフェさんは、近隣道路を含め、綺麗に雪掻きを終えていらっしゃる。
やるしかない。
しかし絶望的である。自分の根性からすると、そのようにしか見えない。
一体どうすればいいのだろうかと悩む。
悩んだら雪がなくなるならいくらでも悩むが、悩んでも雪はなくならない。
何事も、まず始めてみることが大事であることは、経験上わかっている。
とにかくスコップ一個で地道にやってみる。
雪を移動させる場所に困る。
スコップが小さいから効率が悪い。
1台分終わらせるだけでもずいぶん時間がかかる。
とても全部はできない。
「今日は無理」と決めつけたかった。
「本日は、皆様の移動が大変なので中止します。」と、"後付の理由"も考えた。
考え直す。
はたしてそれでいいのか?
私的な理由で仕事のクオリティーを下げていいのか?
自分と同じ年齢で起業して、上場企業まで成長させたTACの社長。彼は選択肢に迷った時は、常に困難な方を選択したという。山梨簿記学院のライバル・目標は、業界最大手のTACである。負けたくない。TAC社長と自分のレベルをこれ以上乖離させたくない。雪掻きを本日中にきっちり終わらせることにした。
ふと気づいた。
本日いらっしゃる方の分だけ雪掻きすればいいのではないかと。
本日お休み予定の方に、電話で確認する。
本日はMAX8台分でいいと判断。
あと、ターザン石井さんは自転車かなんかできてくれないかと思った。
ターザンさんは、筋トレしているから、転んでも大丈夫に違いない。
急にやる気が出てきた。
目標は現実に達成可能な数字に限る。
しかし、きつい。ヘタレの根性なしなので、精神的にも肉体的にきつい。
色々考える。
「奴隷は毎日こんなことをしていたのか。」
「しかも、夢も希望もあったもんではない。」
「シベリアで強制労働された日本兵、武田信玄に金山で働かされた敵捕虜、奴隷船に乗せられた黒人。」
「とんでもない話だ。人間から希望を奪うことはひどいことだ。」
「それに引き替え、俺はなんて幸せなんだろう。」
「そうだ、俺は世界の奴隷を解放してやらねばならん。」
「まて、俺は資本主義の奴隷ではないか。」
余計な事を考えながら雪掻きする。
そのうち、「なんとか雪掻きを楽しくできないだろうか。」と思うようになった。
ホリエモンは刑務所の単純作業まで能動的な自己実現の場に変えた。
「最後まで休まずに仕上げる。」
「とりあえず、あと100回掻くまで手を止めない。」
「これをやりきったら、根性がつく。」
「今年中に仕事でも成功するに違いない。」
「そうなれば、結婚できるに違いない!」
「この雪掻きは、俺の人生の縮図なのだ。」
結局11台分用意できた。道路も掻いた。
途中、近所のおねぇさんが助けてくれた。いつも花壇の手入れをしてくれるおねぇさんである。
「おばあちゃんだけど、いないよりましだよ。」
「凍ったら大変だからねー。」
途中でその息子さんと思われる方も手伝ってくれた。
なお、私は相手の年齢に関係なく、大人の女性は常に「おねぇさん」と呼ぶことにしている。
帰り際、思わず写メをとってしまった。

こんな大人になりたいと思った。
本当の幸せとはなにか?
思うに、「心の安らぎを得る事。」であるとおもう。
しかし、たかが雪掻きで、こんなに心がざわざわしている自分は、とてもめめっちい男であり、心はやすらいでいないかもしれないと思った。
第2駐車場右側。こちらは手付かず。

もう嫌だ。すくなくとも今日はもう無理だ。
お願いです。
溶かしてください。
偉大なる太陽様。
今はあなたにとても感謝しています。
日焼けサロンで浮気していましたが、私はあなたを尊敬しています。