笛吹市フルーツマラソンのハーフにエントリーした。
一人での参加のため「いかない」という選択肢もあった。
考えると最初から棄権しそうだったので、とりあえず走ってから決める事にした。
現地に着く。
消防の方が駐車場の案内をしてくれる。消防の方には頭が下がる。
こういう人に大会は支えらている。やはり、安易な棄権などできないだろう。
スタートする。
周囲のペースが速くてびびる。
あっというまに後方に取り残される。
もしかして、自分は場違いなところに来てしまったのだろうか。
前回(山中湖一周)はコスプレみたいなランナーが多かったが、今回はほとんどいない。
前回の経験でわかっていたが、問題は心肺機能ではない。
ゆっくり走れば、2~3時間くらいどうってことはない。
問題は足腰だ。長距離を走ると、長年の怠慢で弱った足腰が持たない。
とりあえず、足腰に負担がかからないように小刻みに走る。
とにかく完走したい。
完走できないようなら、一生結婚もできないような気がした。
上場など戯言でしかないような気がした。
ペースを極端に落とす。
沿道の方が手を振ってくれる。
こんな練習不足の怠慢野郎に手を振ってくれる。
手を振り返し、応える。
人はやさしさに触れ、やさしくなるのだろう。
だんだん疲れてきた。
坂道は足に来る。
何km来たのだろう。
看板が出た。
スタートから6km
あと2回繰り返しても18km。
絶望的な気分になる。
辞めようか。
辞めたい。
無理だ。
だめだ。
本日は宅建士の試験日だ。
みんな必死に受験している。
11月は簿記検定だ。
忙しい中、無理してみんな勉強している。
俺がサボるわけにはいかない。
完走して、受講して頂いてる皆様にエラそうに言いたい言葉がある。
これはかっこいいはず。決まりだ。意地でも言う。だから完走したい。
苦しい。
ハーフに挑戦した友人から教えてもらったことがある。
「女の尻を追いかけながら走れば頑張れる!」
いい歳してそんな技は使いたくない。
しかし、苦しい。
技を使う。
「うおおおおおお!おねぇさん、その尻俺が追いかける!」
前を行くおねぇさんの尻をずっと追いかける。
やる気が出る。それ以外無心になる。
終いには、おねぇさんを追い越す。
「振り返って顔を見てはいけない。」とのアドバイスも受けた。
理由は二つある。一つはマナー違反、もう一つの理由は「多くの場合後悔するから。」らしい。
一応守る。しかし折り返しでチラッと見てしまった。同じくらいの歳のおねぇさんかとおもったが、結構歳上のおねぇさんだった。だが、後悔はしない。おねぇさんは、俺にエネルギーをくれたのだ。
15kmくらいで足腰がキツクなる。
やはりアップダウンがキツイ。
遅い。実に遅くなる。気力を振り絞るが、足がついてこない。
ロッキーは恋人のエイドリアンにこう言った。
「チャンピョンには勝てないだろう。」・・・「だが、俺が最終ラウンドのゴングが鳴るまでリングに立っていられたら、俺はその時、ならず者じゃないって事を証明できるんだ。」
「くそったれ!人生と同じだ。俺は遅れている。後ろの方だ。だがリタイヤはしない。最後まで走ってやる。命を燃やすんだよ!俺は根性なしなんかじゃねぇ!」
すでにGOALして帰宅している人たちがいた。
その方たちが、「あと少しですよ!」とこんなグダグダの自分にやさしい声をかけてくれる。
「ぁひとぅ・・ござぃまぅ・・。」と、声にもならない声で応える。
前回も気づいたのだだが、マラソンの会場にはゴミがほとんど落ちていない。
ワールドカップサッカー日本代表のパブリックビューイング、国立スタジアムはひどかった。火災が起きたらゴミだけで観客席が火の海になりそうなほどゴミだらけだった。マラソンランナーは人としてできている人が多いのではないだろうか。
残りあと3km。
GOALはあと少しだ。
気力を振り絞る。しかし、足腰がついてこない。
あと20kmとかだったらこの時点でリタイヤしていただろう。
しかし、目の前にGOALがあると、人は少々の無理が出来る。
GOALを迎えた。
恥ずかしかったが、練習で橋を登り切ったときにしていた、ロッキーの拳を天に突き差すポーズをした。やる権利はあると思った。
マラソンになれている人から言わせれば、ハーフなどどうってことはないだろう。
ハーフごときでそんな葛藤いらないだろうと言われそうである。しかし、自分にとっては偉大なる挑戦だった。自分がどう思うかが大事である。
最後にエラそうに言わせてもらう。
「私はあきらめないでハーフマラソン完走しました。皆様が試験頑張っているのに私がリタイアするわけにはいかないからです。皆様も最後まで走れます。試験まで完走した、それ自体が立派な結果です。得点は何点でもいいので、最後まで頑張ってほしいと思います。」