授業が始まった。
借方・貸方…。
なんだそりゃ。
もっと単純なものだと思っていた。
思っていたより専門的で、思考力が必要な内容だと思った。
知り合いが言っていた。
「簿記3級なんて楽勝だよ」
一体どこが楽なのだろうか。
そもそもあいつは合格しているのだろうか。
とにかく、やるしかない。
それも3級ではなくて、2級。
専門家から、3級ではあまり転職の武器にならないと聞いた。
2級取得で、少なくとも書類選考に通る確率がだいぶ上がると聞いた。
だから2級。
3級は受験しない。
2級一本に絞る。
自分は2級に合格しないといけないから。
3級をマスターしないと2級の合格は厳しいらしい。
だから、いまはとにかく目の前の3級をやるしかない。
とにかく、やるしかない。
地道な努力を続けるしかない。
人生において、頑張らなければならない時がある。
それが今なんだ。
「後でやろう」
俺は生まれてからそうやって何度も逃げてきた。
「後でやろう」は、今はやらないのと同じ。
今やる。
明日じゃなくて、今日。
後じゃなくて、今やるんだ。
泣き言を言って人生がなんとかなるわけじゃない。
仕事がない。
お金がない。
2級合格でいい仕事にありつけるかわからない。
でも、努力し続けて、少しでも可能性を上げる以外方法がない。
コネもなく、努力もしない人間にいい仕事なんかやってくるわけががない。
自分は他人より優れているなんて勘違い甚だしい。
そんな人間はゴミのように世の中に溢れている。
俺は今、ゴミ。
そしてこのままでは永遠にゴミ。
ゴミのまま終わりたくなければ努力するしかない。
宝くじなんかあたらない。
努力なくして勝利はない。

簿記に関係ない昼間の職業訓練と、夜間簿記学習との両立は楽ではなかった。
しかし、やるしかなかった。
疲れていても、毎日勉強した。