2009年5月15日(金)、業務終了前だった。
「非常に申し訳ない。」
突然告げられた言葉。
「私どもの努力が至らなかったせいです。」
そこから先に何を言われたのかよく覚えていない。
突然言い渡された、予想すらしなかった言葉。
規模が大きい。
土日が休み。
定時に帰宅できる。
そんな適当な理由で選んだ会社。
大学を卒業し、なんとなく就職し、特に何もせずにすごしていた毎日。
そこに、突然現われた落とし穴。
最初は、信じられなかった。
リストラは他人事だった。
「まさか自分が。」
冗談に違いないと思っていた。
だが、それは本当だった。

新しい会社を探さなければならない。
自信はあった。
その会社での仕事は出来ていた。
自分の能力は高い。
自分は大丈夫。
どんな仕事でもこなす自信がある。
新しい会社でもやっていける。
転職は楽勝だと思っていた。
しかし、それは根拠のない過信だった。
希望するような仕事はなかった。
初めて自分の未熟さを知った。
「自分に一体何が出来るのだろうか。」
自問自答する。
いや、「何が出来る」ではない。
「これから何かを出来る人間にならなければいけない」のだ。
この先、ブレずに一つのスキルを磨く。
その会社だけの仕事ではなく、どこでも通用する力。
会社がなくなっても、どこの会社でも通用する力。
しかし、それが何なのかはわからなかった。
ある日、ハローワークのカウンセラーから、「簿記」なるものを勧められた。
「簿記」
何をするのか良くわからない。
調べたら、経理・財務の入り口になるものらしい。
財務・経理のスキルはどこの企業でも必要らしい。
正直不安だった。
そんな未知なものを勉強して、将来の不安が解消するとは思えなかった。
しかし、他の選択肢があるのか、その見当すらつかなかった。