最後の一人。
「どうせ一番後ろからスタートだ。フフフ人生と同じよ。」
「前にいて抜かれるより、後ろからスタートして抜き去った方がだのしいだろう。」
「そう、俺のこれからはごぼう抜きよ!」
しかし、まだ後ろがいた。
後から登場した、
最後の俺よりもさらに距離を置いた、
こんな格好していた兄ちゃん。
南アルプスの桃源郷マラソンハーフにもいた。。

登場方法からして、明らかに意図的な一番後ろ。
最後尾譲る意思なしと推定された。
恰好からして、最後尾は俺よりも彼に優先権がある。
最後尾はあきらめ、適当に列に入る。
そんなかんだで今年もスタートした。
おっさんになってからの長距離は4回目の出場である。
心肺機能やスタミナは問題ない。
毎回問題になるのは足である。
毎回15kmくらいから足が痛くなる。
今回も小刻みに走り、足を節約することにした。
沿道の住民の方から声援を頂く。
「がんばれー」
「ほらーみんながんばってー。」
「上り坂はあと少しだよー。」
欺瞞でも興味本位でもない、真実の声援。
笑顔で手を振り、声援に応える。
特に子供には満面の作り笑顔で応えた。
「ほら、手を降ってごらん。答えてくれるよ。」
小学生の時、酔っぱらったおじさんが手を振っていたのは、名前を連呼するだけの、町会議員選挙カー。
その選挙カーに向かって手を振ると、「ありがとうございます!頑張ります。」と大音量のマイクで反応が来る。あれが楽しくておじさんと一緒に何度も手を振っていた。
沿道の子供たちは、あのときの俺とは違う。
健全に走るランナーを、真剣に生きている人間の姿を子供ながらに感じ、心から応援してくれているのだ。
老若男女問わず、沿道の皆さんも、ランナー皆に声をかけ応援してくれる。これがマラソン大会の良いところである。
皆、優しいなと思う。
人は優しさに触れて優しくなる。
今日も少し優しくなれるだろう。
つづく。