いつものごとく、何事も経験だ。
知り合いの居酒屋でバイトすることになった。
飲食は未経験だが、まあ何とかなるだろう。
経験がないため、自信はない。
事前準備が必要と考えた。
メニューは概ね覚えている。
メニュー表は自分とFさんが一緒に作成したからだ。
後はお客さんとの基本的なやりとり、テーブル番号を覚えたり、その他色々。
早めに行っていてやる事を聞いておこうとおもった。
一時間前に到着する。
しかし、「やることがない」。
ということで一度帰る事になった。
結局ほとんどぶっつけ本番になった。
客として行くのとスタッフとして行くのは、気持ちが全く異なる。
緊張してきた。
ただ、知らない店ではないし、何とかなるだろうとは思った。
その間、井上先生から電話が入る。
「おせちがあるから食べるかい?」
一度会社に戻る。
15,000円のおせち。
小林さんという方と井上先生、自分の3人で食べる。
3人とも独身である。
つい言ってしまった。
「こういうの、奥さんの手料理で、のんびり食べてみたいですね。」
余計な事を言ってしまった。
作家の五木寛之さんは、それでも「人は多くしゃべるべきだ。」とおっしゃる。
多くしゃべると、余計な事を言う時も増える。しかし、それでも「人にとってしゃべることは大切な行為」だとおっしゃる。
いよいよ時間がくる。
制服に着替える。
お客さんがいらっしゃる。
急に逃げ出したくなった。
次々に注文が入る。
注文から納品までのシステムはこうだ。
お客さんから注文を伺い、メモ用紙に注文を書く。
注文伝票に書く。
厨房にオーダーを伝える。
料理は厨房で作る。
ドリンク系はこっちでやる。
テーブルに届けたら、届けた分チェックを入れる。
「俺、洗い場専用で。注文はお願いします。」
と言いたいところだが、この人数ではどうにもならない。
注文を取りに行く。
普段ビールしか飲まないから、酒の名前が解らない。
メニューもうろ覚えだ。
何度も聞き返す。
ジュースは作れるが、カクテルになるとさっぱりわからない。
注文を書いている間に次々に注文がくる。
書き終わらないうちに次から次に注文を言われる。
「すいません、少々お待ちください。」
自分が客の時、人が注文書いている間に注文するのはやめようと思った。
空いているコップや皿を下げる。
ビールやジュースのコップが洗い場にどんどん貯まっていく。
ここが貯まると洗う事自体が困難になる。
早めに洗う。
洗っているうちに注文・配膳がある。
結構忙しい。
なんども注文を取りに行く。
お客さんから冗談を言われたので、冗談で返す。
ただ、世の中には冗談のレベルが合わない人がいる。
無難な言葉を選ぶ。
そういうのはかなり得意なので、助かった。
大量の注文が一通り終わり、単発の注文になる。
急に楽になる。
途中で年越しそばをもらう。

プロの作るそば。おいしい。
今年一年、良いことも悪い事も色々あった。
生きていれば色々ある。
今年も色々あるだろう。
それは生きている証なのだ。