
秀吉の幸運は、徹底した合理主義者の信長に仕えたことにある。信長は生死を賭けた厳しい競争を勝ち残るため、古い価値観を捨て、新しいシステムを作ろうとした。そのシステム構築プロセスに、秀吉はうまく乗る事ができたのである。
堺屋太一さんが経済に詳しいだけあって、経済に関する記述が多い。歴史小説兼、戦国経済史入門と捉えても良い書籍である。
心理描写もリアルな感じがする。歴史小説の会話内容の大半は作者の創作である。しかし、堺屋さんの心理描写は、登場人物の当時の価値観を反映しており、概ね当たっているのではないかと思う。
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堺屋太一さんの言葉(本書以外)
「日本の歴史を振り返っても、大きな変革は、それまでにあった価値観をすべて否定することから起こっている。」
「大学受験による基準がすべてになっている人たちでは、何も新しいものは生み出せない。」
「経営者やビジネスリーダーは、官僚の言葉を聞いてはいけない。財界でも官民協調路線で事業を展開してきた大企業は全部衰退している。」
「大量生産、合理化、安売りではなく、いかに多様で新しい価値を生み出していくかに心血を注いでほしい。そこにしか、日本が浮上する道はない。」