本日夕方電話をする。
「はい○○急便でございます。」
中略
「もしかしたら本日お届けできないかも知れません。ただいま担当に確認を取りますので少々お待ちいただけますでしょうか?」
「いえ、結構です。明日の夜まででしたら、いつでも結構ですので。」
「かしこまりました。それではお届けにあがりますので、お荷物到着までお待ちくださいませ。」
遅いなと思っていたブツであるが、自分の不在で遅れたようである。
まぁブツは本日の夜に学校に届くだろう。
講義はないが、ブツのチェックを早めにしたいため、到着まで事務所でのんびりすごす事に決める。ちなみに今回のブツは、今回から新しく使う、若干改訂の入ったTACの商業簿記2級テキストである(なお2級講座はまだまだ募集しています。)。
ネットを見ると、YAHOOトップページの一部に目が止まる。
「内藤vs亀田速報」
お、これは面白そうだ。これはワンセグで見なければ。そういえば対戦するとか言ってたな。
あの亀田っていうの生意気だから、内藤がコテンパンにしてくれないかね。
今夜は特に仕事がない。
仕事は嫌いではないが、こういう夜も良いものである。
本日はのんびりTV観戦できそうだ。
しかし、ふと我に返る。
いやまて、待て。私はこんなもの見てどうするんだ?
私は他人の闘いを見て満足するのをやめたはずだ。
もう私はそんな人間じゃないはずだ。
私は自分の人生を闘うと心に決めたはずだ。
これでは旧ローマ市民と一緒ではいか。
かつてローマ市民は、自分で働かず奴隷に働かせ、コロセウムで剣闘士に真剣勝負をさせ快楽を貪った。
「そしてローマは滅んだ。」
私は彼らと同じではないか?奴隷のように朝から晩まで働く部分だけはローマ市民と逆だとしても、他人の闘いをみて満足する部分はローマ市民と同じではないか。
「これでは滅びる。私は滅びる!」
水が高いところから低いところに流れるのをせき止めるのは、並大抵の努力ではできない。水をせき止めるには大きなダムが必要である。しかし、大きなダムは一朝一夕に作れるものではない。
「それはそうだが、ちょっとだけ見てみよう。ちょっとだけだ。」
お、イケイケ!
あっ、亀田有利か、チッ。
生意気なヤツめ、くたばれ!
試合が終わる。
結局最後まで見てしまう。
私が瞬間的に作った、怠惰な感情を塞き止めるダムは、吹けば飛ぶような、そこら辺の砂をかき集めて出来た、とても小さなダムだった。
新王者誕生のアナウンス。
全身でよろこぶ亀田。
それを見て、自分が醜いと思った。
そして真剣に頑張っている奴は、少なくとも自分より遥かに輝いているとおもった。
どこかで読んだ文がいくつか頭に浮かんでくる。
「この世には、元々善も悪もない。」
「この世には、輝こうとして努力している人間と、そうでない人間がいる。」
「他人の闘いを見て満足したり、妄想で満足する事を止めたとき、新しい人生が始まる。」
今夜、ブツは来なかった。
今夜の自分を、このまま判定負けで終わらせる訳には行かない。
イタリアサッカーセリアAペルージャ経営者ガウチが、闘う気持ちを上げるために、ボクシングで本格的トレーニングをしていた事を思い出す。
私は急遽筋トレを始めた。
「俺は闘う!」
「俺は勝つ!」
無理な筋トレは逆効果である。
私は三角筋を痛めた。

今夜の自分⇒判定負け。