「王になろうとした男」伊東潤 文藝春秋

どうでもいいブログにとって、あまりにタイムリーなタイトルだったので、つい買ってしまった。
織田信長と共に生きた男たちの、それぞれの生きざまが描かれている。
だれかを詳細に描いた長編小説ではなく、別の立場にある者の生き方も描いている短編集である。
織田信長は世界の王になろうとした。
塙直政は、織田家で無理な出世競争をし続け、王に近づこうとした。
アフリカから奴隷として連れてこられたヤシルバは、世界を支配した織田家の下で故郷の王になろうとした。
一方、今川義元を打ち取った毛利新助は王になろうとはせず、自らの職務を全うするのみであった。
また荒木村重は信長に敗れ親族を処刑されるも、自分を裏切った者に対する復讐のため、しぶとく生き続けた。
自分ではどうにもならない大きな流れの中で、それぞれが自らの生き方を貫こうとしている。そしてどこかでぶつかり、結論(歴史)が生まれる。
塙直政の言葉がかっこよかった。
「命の一つや二つくらい賭場(仕事)に張らずば、出頭(出世)などできぬ。」